イケてるNPOの財務諸表分析①―フローレンス―
今回はイケてるNPOの財務諸表分析をします。
第1回目は、病児保育のフローレンス!
フローレンスは、代表の駒崎弘樹さんが立ち上げたNPOで、病気の子どもを預る「病児保育」という事業を行っています。漫画やドラマで話題になった「37.5℃の涙」の元となった団体です。
また、病児保育事業の他にも、おうち保育園事業、伝える変える事業、ひとり親家庭支援(寄付会員制度)事業、働き方革命事業、コミュニティ創出事業、被災地支援事業と多岐に渡る事業を手掛けています。
1.経常収益の推移
まずは、経常収益の推移から見ていきたいと思います。経常収益がとんでもないスピードで伸びていっていますね。なんと約10年で経常収益が46倍の8億円!同じくイケけるNPOであるTeach for Japanが1.1億円、クロスフィールズが1億円であることと比較すると、より凄さが際立ちます。
2.活動計算書
①経常収益
特筆すべきは、「受取寄付金・受取助成金と事業収益のバランスのよさ」です。
多くのNPOは寄付・助成金型か事業収益型の2種類に大別され、寄付・助成金型の収益はほとんどが寄付もしくは助成金、事業収益型の収益はほとんどが事業収益となります。しかしフローレンスは、受取寄付・受取助成金:事業収益=4:6の割合で非常にバランスがいいです。バランスがいいことの利点は、どちらの収益源にも依存することがないので、安定した経営が行いやすいことです。
②経常費用
収益に対する人件費の占める割合が73%と大きいです。これはフローレンスが訪問型病児保育を行っているためです。つまり、①保育という生身の人間にしかできないため、労働集約型のビジネス(施設などの資本よりも労働力に対する依存が強いビジネス)であること、②訪問型なので施設にお金があまりかからないこと、が人件費比率が大きい理由です。過去の財務諸表でも概ね70%程度となっていました。
3.事業部別収益
(単位:千円) | 病児保育 事業部 | おうち保育園 事業部 | 働き方革命 事業部 伝える変える事業 (経営企画室) | コミュニティ創出 事業部 | 障害児保育 事業部 | 被災地支援 事業部 |
---|---|---|---|---|---|---|
2013年度 | 315,975 | 224,686 | 37,093 | 22,220 | 30 | 47,271 |
2014年度 | 375,798 | 263,168 | 32,954 | 24,460 | 81,003 | 79,617 |
昨年度対比 | 119% | 117% | 89% | 110% | 270011% | 16% |
障害児保育事業部の増加が著しいですね。2014年9月に障害児保育に特化した「障害児保育園ヘレン」を立ち上げたことによる影響です。受取寄付金・受取助成金が61百万円、事業収益が20百万円という内訳で、受取寄付金・受取助成金の割合が多いのは、大口の寄付を集めたか、助成金の申請が通ったかが要因かと思います。
①病児保育事業部
病気の子どもを預ってくれる「病児保育」。
②おうち保育事業部
待機児童が集中している地域への保育園開園。
寄付・助成金型。収益の7割が子育て新制度における補助金など。
社会問題に対するアドボカシーやソーシャルプロモーション。
寄付・助成金型。収益のすべてが寄付。
④コミュニティ創出事業部
子どもと子育てを支える最高のコミュニティを創出する。
⑤障害児保育事業部
受入先が極度に不足している障害児を預る保育園を開設。
被災した福島の子ども達の支援。
寄付・助成金型。収益の9割が受取寄付。
いかがでしたでしょうか。NPOの財務諸表を分析してみるのも面白いのではないでしょうか。
最後にフローレンス駒崎さんの著書の紹介をしたいと思います。
「社会を変える」を仕事にする
この本にはフローレンスの立ち上げ期の話が書かれています。そして、駒崎さんの熱い人間性が伝わってきます。社会企業家ってどれくらい熱い想いを持ってるのかを知りたい人には非常にオススメ!
この記事の図表は、フローレンスHP(http://www.florence.or.jp/about/ir/)より転載しております。